キミとの距離は1センチ
◇ ◇ ◇
「佐久真。悪いんだけど、針使わないホチキス貸してくれる?」
デスクでタイピングをしていた姿勢のまま、わたしは顔だけを横に向けて硬直していた。
視線の先には、“いつもと同じ”真顔の、伊瀬の姿。
「ほら、前にも借りた、紙で留めるやつ」
「……あ、ああはい、ホチキスね」
言いながらデスクの引き出しを開けて、中から文房具をしまってあるポーチを取り出した。
なんとなく焦りながらその中を探って、お目当てのものを見つける。
今は席を外しているさなえちゃんのデスク横に立っている伊瀬に、そろそろとそれを差し出した。
「ッ、」
差し出された伊瀬の手にホチキスを乗せようとしたとき、指先が、少しだけ触れて。
思わずびくりと手を引っ込めかけたら、ガチャン!と盛大な音をたてて、ホチキスが床に落ちた。
その音に驚いたわたしは、さらには膝の上に乗せていたポーチまで、落としてしまう。