キミとの距離は1センチ
がんばる、って言っても……もう彼女がいるかもしれない人を相手に、どうがんばればいいのやら。

しかもその彼女が、あのさなえちゃんだし。……どう考えてもわたし、勝ち目ないでしょ。



「………」



さなえちゃんが伊瀬に告白していたシーンを思い出すたび、きゅうっと、胸が苦しくなる。

あんなにかわいい女の子が、あんなに必死に、想いを伝えていて。……ほだされない男なんて、いないと思うから。


それにわたしは、今も──……宇野さんの言葉が、頭に引っかかっているのだ。

わたしの『すき』は『恋』じゃないと言った、あのせりふが。


ベッドに放り投げていたスマホが、ピロンと音を鳴らす。

これは、メールの受信音だ。

また都からかと、緩慢な動作で差出人を確認すると。



「……え?」



ディスプレイに表示されていた意外な人物の名前に、思わず声を漏らした。
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