キミとの距離は1センチ
たどり着いたのは、人気のない廊下の突き当たりだ。

くるりと振り返った青木さんは、なんだか申し訳なさそうな、困っているような、そんな微妙な表情をしていた。



「ごめんね、いきなりこんなとこ連れて来て。我ながら、お節介だなーとか余計なお世話だよなーとか思うんだけど……でもどうしても、確かめたいことがあって」

「……はい」



たぶん、わたしの予想は当たっている。

だってこの女性は、『珠綺さん』と、仲良しだ。



「単刀直入に訊くけど。……木下さんって、伊瀬くんと付き合ってるの?」



ああ、ほら、やっぱり当たった。

私はゆっくり、視線を床に落とした。



「……付き合ってません。単なる、私の片思いでした」

「でも、こないだ告白したんでしょ? それに伊瀬くんが『ありがとう』って答えたって、聞いたんだけど……」



ほんとにすごく、直球な人だなあ。

こんなふうに臆することなく意見を言えるの、憧れる。


うっすら笑みを浮かべながら、私は答えた。



「そうですね。……でも私は、キッパリ振られましたから」



そして思い出す、あの日のことを。
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