キミとの距離は1センチ
◆ ◆ ◆
「……木下さん!」
自分を呼び止める聞き慣れない声に、思わず立ち止まった。
振り返ると、廊下の向こう側から、見覚えのある人物が小走りに近付いて来るところで。
……ええっとたしかあの人は、珠綺さんの同期で財務経理部の……。
「……青木さん?」
「あ、あたしの名前知ってたのね。うれしーわ」
目の前まで来たその人が、にこっと私に笑いかけた。
近くで見ると、またすごく美人だ。パーマがかった髪をひとつにまとめてるだけなのに、妙な色気がある。
そんな青木さんが、ちょっとだけまわりを気にしてから、こそっと耳打ちしてきた。
「ちょーっと、木下さんとお話したいことがあるの。今時間いいかな?」
「……大丈夫ですよ」
なんとなく、その話の内容がわかった気がして、思わず苦笑しながら答える。
じゃあこっちね、と言って歩き出した青木さんに続いて、私も足を動かした。