キミとの距離は1センチ
そこで木下さんが、バッグを肩にかけながら立ちあがった。



「それじゃあ、私も帰ります。伊瀬さん、珠綺さん、お先に失礼します」



笑みを浮かべながらそう言われ、俺はうなずく。



「うん。お疲れ」

「お疲れさまー。気をつけて帰ってね」

「はい。ありがとうございます」



お辞儀をして去って行く彼女の手には、紙コップが握られたままだ。

どうせなら飲み切ってから、行けばいいのに……そんなに早く、この場を去りたかったのか?


……もしかして、俺に気、使ってる?



「………」



あの子は……気付いてるん、だろうな。

まあ、俺も別に、かたくなに隠してるつもりもないんだけど。……ちょっとやそっとじゃどうせ気付かないからな、本人が。


ぼんやり木下さんの後ろ姿を眺めていたら、なんだか隣りから、不躾な視線を感じる。

なんとなぁく嫌な予感がしながらも、目線だけ動かしてそちらを見やると。

さっきと同じようににやにや笑いの佐久真が、また同じように俺の肩をつついた。
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