《キャラバト》白衣の保険医と黒い翼
うっとりと背中の翼を見つめ始めた。
「…お姉さん、さすがに敵にその距離はないと思うよ?」
忠告する義理も何もないのだが。
さすがに引くくらいのなつきようなので、心配してしまったのだ。
「なんで?私たちは共に鳥だぜ……敵とか、ゆーなよ…」
「え」
しゅん、と悲しそうな顔をする朱祢に言葉を詰まる。
少女のようにあどけなく、今にも泣きそうだ。
なんだかすごい落ち込みようだ。
――こんなことなら最初から翼だしておけばよかったかな
戦法としてなら、それで油断させて襲うのもありだった。
が。
「……」
手が、ゆっくりと彼女の頭に向かう。
俯いてる朱祢はそれに気づかない。
ゆっくり、ゆっくりと――
「朱祢ぇええ!そいつから離れろ!!」
刹那。
凄まじい叫び声と共に、ヒュンッと風を切る音がラスクの真横でした。
「…っ!?」
つぅ、と頬が切れた。
みると、近くの木に剣が刺さっていた。
投げたのだ、剣を。
朱祢のなぎたんではない、全く別の――
「だありん!?」