《キャラバト》白衣の保険医と黒い翼
「……ぇと、ちゅーしました」

「……」

「まがんってやつで」

「……ちゅー」

「……はひ」

「…ちゅー、しちゃったの」

「……ぅう」


声色は怒ってるが、困ってる朱祢が可愛かったのか、顔は笑ってる。

それを俯いてしまった朱祢は気づかない。

「あーかね」

「すみません……」

「うん」

まるで親みたいにポンポンと朱祢の頭を撫で始めた。

「俺以外にちゅーするなんて、浮気だよ?」

「…はぁい」

「術なんかにかかっちゃって…未熟だなぁ」

「…ごめんなしゃぁい」

「まあ朱祢に怒ってもしょーがないか」


朱祢から手を退かして。

くる、と正面――敵、ラスクを見据えた。

くいくいと空気を引っ張る動作をすると、木に刺さった彼の愛剣が彼の手元に飛んできた。


「てめぇ…翼なんかつけて朱祢を味方につけやがってぇ!しかも俺様の朱祢たんにちゅーなんて…よくも、よくもぉおお!」


「ようやく二人の世界から戻ってきたと思ったら…これか」


ため息をついたラスクだった。
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