《キャラバト》白衣の保険医と黒い翼

「まぁいいよ。理由がどうあれ――戦うのは嫌いじゃないからね」


「戦うの!?やめろだありん!」

悲痛な声をあげる朱祢。


「……朱祢」


彼女は仲間意識が強い。

貿易の神だからなのか、それとも彼女の性格か。
仲間と認めたものはとことん愛する。
鳥だけでなく、それが人間でも。化け物でも――


「何を甘ったれてるのじゃ、愚か者が」


凛とした美しい声。

「ミイラ取りがミイラになるな。警察が犯罪者に心奪われるな――基本じゃろう?」

紺色の髪に、OL風なスーツ。
首もとには朱祢とお揃いの星形のネックレス。


「鸞!」


朱祢が声をあげた彼女は、先程連絡してきた鸞だった。

「何を逃げてるのじゃ。そこの異国の神々よ」

朱祢を無視して、ラスクを睨み付ける鸞。
風格漂う鸞に全く動じず、いつものように軽い笑みを見せるだけだった。

「だって、無駄に動くとつかれるんだ」

「理由になってないな。捕らえよ、黒庵(コクアン)」

黒の彼に指示をすると、にやりと彼――黒庵は笑った。

「言われなくてもそうする!」

だっと走り、一気にラスクの間合いに入る。

「へぇ」

速い、朱祢とは比べ物にならないほど。
風を切る音を立てないところが、さすがといったところか。

音を一切たてず、殺気すら消す黒庵のせいで、攻撃がわからず防げない。
薄っぺらい鎌を用いても、防ぎきれない彼の速さ。
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