二番目でいいから[完]
「八尋だけが好き」
そうハッキリ伝えると、
胸の中で少しだけ鼻を啜る音が聞こえた。
「……卯月、ブラズレてるよ」
「八尋が外したんでしょうが……」
「そうでした、直しとくね」
泣いてしまったことへの照れ隠しなのか、なんなのか、しょうもない冗談を言う彼の頭を叩いた。
ふたたびパーカーの中に冷たい手を侵入させ、律儀にホックを止める八尋。
それから、ぎゅっと私に抱きついて、小さな声で、
大切にする、と呟いた。
折角涙が引っ込んでいたのに、その一言で私の涙腺はまんまとふたたび緩んでしまった。
そんな私の涙を、八尋はパーカーの袖で乱暴に拭ってから、自分の分の涙も拭って、
ダセーと言って、笑ったのだった。
end
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