前を見すえて
名前をおぼえてもらえるのはうれしい


けど


それは僕じゃないんだ。



琉王司は僕じゃない



むかむかとしてくる、琉王司なんて。



確かに”これ”で助かったこともあるけど

失ったもの、得られなかったものもある。





「登也!

おっす」



「佐伯・・・」


佐伯 克真(さえき かつま)



この学校で敬語じゃなくしゃべりかけてきてくれるのは佐伯だけだ。



「克真でいいっつーのっ!


こんどはそーよぶなょ」



佐伯グループは今、倒産ぎりぎりのところ



でも佐伯は



”助けて”とか


”お前からお父様に言ってくれ”とか


絶対に言わない



だってお互いがそれを嫌うんだから。



だから佐伯・・・ぃゃ、克真とは合うんだ。





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