裏ヤン先生に愛されます


あたしは本当にセンセーのことで、頭がいっぱいだったのに。

センセーは違うんだね。

ずっと麻綾さんが、心にいたんだね。

(期待していた自分が馬鹿らしい。結婚直前にあたしを好きになるとか、ありえないのにね…)

少しだけ見えた可能性が、全くの0になって。

ようやく分かった気がする。

「…センセー好きだよ」

泣きたいくらいに、センセーが好きだった。

(麻綾さんよりも早く出会いたかった。

センセーと同じ歳がよかった…)

泣きたいのを堪えて、今日は家に帰った。

無断で帰っちゃったから、センセーは怒るだろうか。

(いや…きっと思わないんだろう…)

夜道を歩くなって言われたのに、つい外を走っていた。

「…お前、猫沼か?」

「え?」

「…コイツだ。ほら、連れて行け」


あたしは、何かを忘れていたのかも知れないんだ。

夜の世界の本当の恐怖を。

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