新撰組異聞―鼻血ラプソディ
翡翠の刀の稽古に、斎藤と沖田が土方の後を引き継いだ。


土方は1人、無心に素振りを繰り返し稽古を終え、翡翠に「ゆっくり休みなさい」と告げ何事もないよう、稽古場を出た。


翡翠は隊士らの声を頼りに稽古場を出て、井戸端へと向かい、目隠しの手拭いを外した。


心地好い風が翡翠の頬を撫でる。

井戸水を汲み、翡翠は豪快に顔を洗う。


冷たい水は汗も心の迷いも洗い流すように、爽やかな気持ちにさせる。


不思議と、女性ばかりの中にいる恐れは感じなかった。

汗の臭いの成せる技なのか、真刀を振るった興奮からか、震えは感じなかった。

翡翠は更に、頭にも水を被った。

汗まみれの髪をゴシゴシと井戸水で洗うと、袂から手拭いを取り出し、ワシワシと拭き、サッと目隠しをしようと目に手拭いを当てた。

< 122 / 164 >

この作品をシェア

pagetop