新撰組異聞―鼻血ラプソディ

2話 眠れぬ夜の子守唄

剣道の胴着、袴から和服に着替え、翡翠は井戸水で顔を洗う。

臥せっていた数日間で、寝癖が付きパサパサになった髪をワシワシと荒々しく洗い、「オッシャー!! これでイケメン復活や」と叫ぶ。


桶に汲んだ水鏡に映る自分の姿を、目を凝らし見つめる。


土方から大役を任されたことに、嬉しくもあり緊張感もあり、不安もあり、複雑な気持ちで歪んだ顔。


翡翠はすくっと立ち上がり、右手を腰に当てる。


思い切り深呼吸し、叫び出す。


「気合いだーーーっ気合いだ、気合いだ、気合いだーーっ!! はあー!! カーメーハーメーハーーッ!! ACHO--ッ!!」



――決まった!! バッチ来い★めっちゃ決まった


ボーズをとる翡翠の姿をおかっぱ頭に、瓶底眼鏡をかけた女がマジマジと見つめている。


大丈夫か!? という顔とも、翡翠の性別を確かめている風にも、唖然としている風にも見える。
< 147 / 164 >

この作品をシェア

pagetop