新撰組異聞―鼻血ラプソディ
「土方さん、無理ですよ。こんな状態で、死合いなんて、剣なんか振れません」



「それは、総が決めることではない。翡翠が決めること」


鋭い目が沖田を睨む。



「総、稽古場へ行きなさい」


「でも……翡翠くんが……こんなフラフラで」



「……い、いやや、中止になんかせぇへん」



土方と沖田は翡翠を凝視する。


「……俺は、必ず沖田さんから1本取ってみせる」



震える声、消え入りそうな頼りない翡翠の声を、土方と沖田は確かに聞いた。



「翡翠……」


「俺は幕末の剣士なんかに負けへん。
沖田さんなんかに負けへん」


目隠しをしたまま言う言葉かと、嘲笑いたくなるような言葉だ。


だが、翡翠の言葉に土方も沖田も笑うことができない。



「……稽古場にこのまま……目隠ししたまま、稽古を見せてもらえまへんか」



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