新撰組異聞―鼻血ラプソディ
「総、着物を整えなさい。あなた方も」


土方の怒号が、翡翠を更に怯えさせる。


土方は着物を整え、翡翠に近づく。


たらり――。
鼻から垂れた雫が、次々と連なる。


「手拭いを!!」


土方の言葉に、部屋を覗きに来た隊士が廊下を慌ただしく駆け回り、手拭いを手に戻ってくる。



沖田は隊士の手拭いを鷲掴みにし、翡翠に近寄る。


1枚を抜き取り、残りを土方に渡すと、素早く目隠しをする。



土方が翡翠に当てた手拭いが、真っ赤に染まっていく。



「翡翠、落ち着きなさい」


部屋を覗く騒がしい人の気配を感じて、翡翠の震えは更に激しくなる。



「見世物ではない。出ていきなさい」



張り詰めた土方の声。

部屋を覗きに来た隊士が引いていく。



「土方さん、死合いは中止に」


ピクリ、翡翠の肩が跳ねる。




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