新撰組異聞―鼻血ラプソディ
――これが翡翠くん……の気!!

寒気がするような威圧感。
細身の体が大柄な男に見える。



――沖田さんには隙がない。
仕掛ければ沖田さんは、確実に返してくる。



――翡翠くんは、動かない。

互いに牽制し合う2人。


「山南さんに使った手は通用しないわよ」

沖田が翡翠を煽る。


「わかってますよ」

翡翠は冷静に言いながら、じわりじわりと沖田に悟られないよう、体を揺らさず間合いを詰める。


徹底して、正眼を外さず、崩さずに――。



翡翠……くん!?
翡翠くんが先に打ってくる!?



沖田は竹刀を翡翠に向かって、前に突き出す。


だが、翡翠は打っていない。
まだ何もしていない。



何も衝撃がない!?
沖田の目に動揺が浮かぶ。



翡翠は上段から、沖田に向けた竹刀を真っ直ぐ、面に降り下ろす。



――避けられない!?



沖田の頭上で翡翠の竹刀が小気味良い音を鳴らす。



「面ありーーーっ、翡翠1本」


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