1%のキセキ
<side 宗祐>
今日は久しぶりに実家に帰ってきていた。
母親が張り切って色々料理を作り過ぎたと、ご近所へおすそ分けに回っている間。
昔使っていた自室へ久しぶりに入った。
少し埃っぽいが、ほとんど学生時代のまんま。
そのクローゼットの中にある中学時代の学ラン。
卒業式のあの日、女子から剥ぎ取られるようにほとんどのボタンを奪われた。
ただ、一つを残して。
きっと未だに残っているであろうそのボタン。
俺は、胸元のポケットの中に手を突っ込んだ。
……やっぱり、まだあった。
手の中には、あの日ずっと握りしめていた第二ボタン。
もしかしたら、未結が話しかけて来てくれるかもと思って。
欲しいと言われたら渡せるようにと。
あの日、女子の襲来にあってから、もう第二ボタンを取られたと見せかけて、あらかじめ取っておいたのだ。
だけどそんな甲斐空しく、未結から声がかかることはなかった。
中学時代、未結を傷つけてしまった俺には、とてもじゃないけど軽々しく話しかけることなんでできなかった。