私と彼の恋愛理論
数日後、彼女は本当に本を見つけた。
膨大な蔵書の中でそれを見つけだすことがどれほど大変だったのか、俺には見当もつかないが。
連絡をもらって、すぐに本を借りに行く。
彼女は、本当に呼んだらすぐ出てきましたよ、と勝ち誇った顔で笑っていた。
それから、彼女の笑顔が忘れられなくて、しばらく俺は図書館に通った。
仕事の資料を借りるという口実にも限界があるので、自習スペースで勉強することにした。
一級建築士の試験勉強をしなければいけなかったのは本当だ。
もちろん、勉強なら家でもできた。
むしろ、その方が捗ったかも知れない。
だけど、俺は見つけてしまった。
図書館の2階。
吹き抜けに面した自習スペース。
建築関係の書棚にも近いそこから、彼女のいる1階のカウンターがさりげなく眺められることに。
そんな行動を取ってしまった自分に、一番驚いていたのは自分で。
ひょっとしてこれは、軽いストーカー行為に当たるのではないかと考えて怖くなったりもした。
自分は勉強に通っているだけだと、何故か自分にも言い訳した。
恋愛の経験はそれなりにあったが、相手に求められれば応じるといったスタンスでやってきた。
どうすればいいのかわからない。
ただ、彼女と会いたい。
すれ違うたびに交わす短い雑談だけではすでに足りなくなっていた。
そうやって悶々としていた時だった。
彼女が、自習スペースで勉強する俺に、茶色い紙袋を差し出してきたのは。