私と彼の恋愛理論
二人とのこんなやり取りはいつものことだ。
あまりプライベートを明かさない俺のことを、面白がって何かと詮索してくる。

年齢が近いこともあって、自然とつるんでいた。
三人とも、独身で一人暮らし。
昼飯や仕事帰りに飲みに行くのも、だいたいこのメンバーだ。

仕事が立て込むと必然的に会社にいる時間も長くなる。
不本意ながら、俺のことを一番知っているのは家族でも恋人でもなく、この二人なのかもしれない。


それにしても、鋭いな。


先輩の言うとおり、俺は引っ越しを機に、彼女にと一緒に暮らそうと思っていた。

そのために、忙しい仕事の合間を縫ってわざわざ広い部屋を探した。

間取りは1LDKだが、荷物が多そうな彼女のために収納が充実していて、最新型のシステムキッチンが付いた物件だ。

家具だけでなく家電も一通り新調した。

すべて彼女と暮らすためだった。


だけど。

俺は最も肝心な一言が言えなかった。


俺と一緒に暮らしてほしいと。



なぜなら、一緒に暮らす合理的な理由が見つからなかったから。

彼女と暮らしたい。
これから先もずっと一緒にいたい。


その気持ちに嘘はない。

それどころか、これ以上ないくらいの本心だった。

分かっていた。

普段口に出して言ったことなんてなかったけれど。


俺は彼女を愛していた。


その感情が動機の全てで、他に理由なんてまるでなかった。

だから、今更照れくさくてどうしても言い出せなかった。

取ってつけたような理由を口にするのも、何の理由を言わないのもはばかられた。


言うのを躊躇っているうちに、予想通り仕事が多忙を極めた。

引っ越さなければ、毎日彼女の部屋に転がり込んでいただろう。

だけど、通勤至便な新居があるのに、わざわざ深夜に彼女に会いに行く理由が見つからなかった。

いつもなら定期的にある彼女からの連絡が、二週間もないことに気づいた時はさすがに焦った。

こんなことは初めてだったから。

だけど、自分から連絡すら出来なかった。

用事もなく、ただ声が聞きたかったなんて、俺には言えない。
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