私と彼の恋愛理論

「皆川さん、恋人に会えたんですって。」

よかったと何度も頷きながら、人の幸福をこんなにも素直に喜んでいる女は、私の同僚であり、親友だ。

今日は珍しく、まどかとシフトが重なって、昼休憩を一緒に取っている。

少し肌寒いけれど、これぞ秋晴れという空模様だったので、中庭のベンチでのランチだ。

まどかの手元には、お手製のお弁当。
料理上手な彼女らしく、彩りも栄養バランスもばっちりで。

私はというと、朝立ち寄ったコーヒーショップで買ったサンドイッチにポットに入れたコーヒー。

お互い安定のメニューである。 


「会えたからって、うまくいくとは限らないでしょう。」

私は少し意地悪く笑って、彼女の話に反論する。

「でも、きっと彼女も忘れられないんじゃないかと思うの。」

そう、まどかが語っているのは、ついこの前までまどかに熱心にアプローチしていた男と元恋人の話で。

本当なら、忘れられない女がいながら自分を口説いていたという事実に憤慨してもいいはずのところ、その二人を応援してしまっているのだから、この親友の人の良さは、呆れるを通り越して感心するほどである。


「忘れられないのは、まどかも同じでしょ。いい加減、はっきりさせなさいよ。」

そういう、この親友にも実は三ヶ月近く前から音信不通の恋人がいる。

「もう連絡すらする勇気がないわ。」


私は知っている。

力なく笑う彼女が今もその恋人のことを深く愛していることを。
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