私と彼の恋愛理論
私は彼の告白をただぼんやりと聞いていた。何が起こったのか、自分でもわからなかった。

ただ、彼の言葉だけが、勝手に私の脳内に浸透してきて、私の目からは大粒の涙が溢れる。

「私は嘘つきなんかじゃないわ。今日以外に、あなたに嘘を付いたことなんてないもの。」

泣きながら、やっと絞り出した声に、彼は頷く。

「ああ、今日嘘をつかれて分かったよ。君は僕に嘘をつけない。あんなに分かりやすいんだ。二年前も僕はてっきり君に嘘を付かれたんだと思ったんだけど、そうじゃない。よく思い出してみれば、ただ君の言葉を勝手に勘違いして僕が拗ねてただけだ。」

拗ねていたという表現が可愛くて思わず、吹き出してしまう。

「ふふっ…拗ねてたの？」

「ああ、最近まで。二年間ずっと拗ねてた。」

笑いながら、彼としばらく見つめ合う。

「翔子、もう僕は理解してるつもりだけど、教えて。二年前の君が何を考えてたか。」

彼の真剣な眼差しに、私は少し意地悪したくて、首を傾げる。

「聞くのは、二年前の気持ちだけで満足？」

そう言って笑った私に、彼はわざとらしくため息をついた。

「確かにそれだけじゃ満足出来そうにない。今、何を考えてるかも教えて。出来れば、そっちの方を先に。」

そう言って、私に向けられた笑顔は、やっぱり私が大好きなそれで。



「私も、愛してる。」

ほとんど反射的に、私の口からは愛の言葉が飛び出していた。
< 96 / 98 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop