ラザガ
リリーの唾液は、とてつもない濃度を持った強酸だった。ジュオームも入り混じったその唾液は、鉄をも溶かし、消化することができる。
三人の所員達は、ミチの目の前で、激痛に苦悶しながら溶けていった。
「痛い痛い痛い痛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!いだだだだだだぎゃああああああああああああっ!!」
「えぐっえぐっえぐっぐべべべべべぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「た、た、た、たたたたたたたた助けでぇああああああああやだぎゃあああああああああっ!!」
やがて悲鳴がやんだ。
リリーの舌の上で、肉色のねばついた水溜まりが三つできていた。これをしたいがために、リリーは口を開き、所員達を惨死へと誘ったのだ。
ミチの目に、涙が溜った。
車の下から、しゅうう、と音がした。どうやら、輸送車のタイヤも溶けだしているようだ。このままでは車体が溶け、中にいるミチも……。
「お父さん……」ミチはつぶやいた。「助けて、お父さん」
熊のぬいぐるみを握りしめる。
「あなたは逃げないのね。つまんないの」
リリーの声が響いた。声と同時に舌がぐねぐねと動き、輸送車が大きく揺れた。
ミチは座席にしがみつき、外へ転がり落ちないようこらえた。
「まあ、いいわ。噛みつぶしてあげるから」
リリーは舌を器用に動かして、輸送車を巨大な歯の上にのせた。
ミチはもう限界だった。
「……お父さんっ」
上の歯が降ってきた。
輸送車は歯に挟まれた。
べこっと音がして、輸送車の天井板が内側に向かってへこんだ。
ミチは、思いきり泣き叫んだ。
「助けてぇぇぇぇぇっ!! お父さぁぁぁぁぁんっ!!」