ラザガ
「え?」
運転席の所員が、車のライトをつけた。光に照らされて、周囲の風景が見えるようになった。
前方に、真っ白な岩のようなものが、横一列にたくさん並んでいた。車の下には、ピンク色のやわらかそうな地面が、広がっていた。
巨大な歯と、巨大な舌。
ここはリリーの口の中だ。
「あ…あ…あ…」
所員達は、悲鳴をあげる気力すら失った。壊れた機械のように、体をふるわせはじめた。
ミチも、さすがに顔を青くしていた。
「食われるのか……?おれ達……食われるのか……?」
「嫌だ……。嫌だよお……」
その時、闇の中に光が射した。
リリーが、少し、口を開いたのだ。
輸送車の前方、並んだ歯と唇の向こう側に、外の景色が見えた。
「やった!……で、出られるぞ!」
三人の所員はいっせいに輸送車のドアを開いた。
「待って!何かおかしいよ!」
ミチがあわてて所員のひとりの足をつかんだ。なぜリリーは口を開いたのか?
「うるせえ!離せ!クソガキ!」
その所員は、ミチを突き飛ばすと、車の外に飛びだした。他の二人もそれに続く。舌の上に乗ると、三人は口の外に向かって駆けだした。
「がっ!?」
その時、三人の足に激痛が走った。三人は、下を見て、それぞれ絶句した。
足が、溶けだしていた。
三人の足が、白い煙をあげながら、どろりと溶けているのだ。