追いかけても追いかけても


奏多とは大学のサークルで仲良くなった。
明るくて友だちも多い彼に惹かれるのはそんなに時間がかからなかった。
でもその頃から彼には好きな人がいて、それは周知の事実だった。

彼が好きだった人は同じサークルのお姫様のような子でふんわりしていて女の子って感じのとても可愛い子。
私に勝ち目なんてないと思ってた。
その子が先輩と付き合うまでは。

先輩と付き合い始めたと知った奏多はそれは落ち込んでいた。
そこに私が「私のこと好きじゃなくてもいい。あの子を忘れるのに使ってくれていいから。だから付き合って!」と押したんだ。

奏多は戸惑っていたけど小さく頷いて私を抱きしめた。
本当はわかってたのに。
ただ寂しくて辛くて悲しいだけで、たまたまそこに私がいただけなんだって。
それでもよかった。

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