恋愛事案は内密に
駅から少し目抜き通りに入ったオフィスビル群の中の一角に多く集まる雑居ビルにその会社があった。

雑居ビルといっても他社の支社が多く集まるビルで、オフィスもまだ新しく、壁や床もきれいだった。

エレベータに乗り、手前にある廊下を抜けた奥に支社を構えている。

ドアを開けると、入口のカウンターに人材派遣会社のように白い電話が置かれ、内線でつながっていた。

「人材派遣の郡司ですが」

郡司さんが電話をかけてすぐに黒色のベストに同色のスカート姿の女性が対応してくれた。

ちらりと私の顔をみると、少しだけ口元が笑っていた。

入口近くの応接室に通される。

白い壁に黒の革張りのソファ。

郡司さんと隣にすわりながら、緊張でどうかなりそうになった。

「どうも遅くなりました。北野あさみです」

白く細い指先から名刺を渡された。

肩書は副所長だ。

「はじめまして、森園むつみです」

右耳だけにボブカットの髪をかけている。

グレーにホワイトのストライプが入ったパンツスーツがよく似合っている。

「所長はあいにく本社へ会議にでておりまして」

「そうでしたか」

「それで、この業界についてお詳しいとのお話を郡司さんにお聞きしましたけれど」

「以前在籍していた会社が御社と取引がございまして」

「そうですか。じゃあ、わたしたちの会社の型式等もわかってらっしゃるのかしら」
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