恋愛事案は内密に
返す言葉もなく、一方的に電話は切られた。

できっこないのに、頭の片隅に大和と復縁できるのなら、という悪魔のささやきがある。

ふっと、所長のあの笑顔が浮かぶ。

あんなに近くにいたのに、どうして。

自分が突き放したのに。

相談したところで、無理に決まっている。

非常識な提案に所長は乗るわけはない。

本当はいやだけど、やるしかないのだろうか。

少し汗でべたついた制服のワイシャツを脱ぎ、私服に着替えた。

できっこない困難な問題を抱えながらエレベーターに乗る。

私にしかできないことをすれば、大和も私も幸せになれるんだろうか。

エレベーターの扉が開いた時、ちょうど所長と出くわした。

「……お疲れ様です」

「お疲れ様です」

入れ替わるように所長はエレベーターの中に入り、私はそのまま降りる。

ぎこちない一般的な挨拶だった。

所長との関わり方はこれでいいんだ。

派遣の身だ。

また最初の頃の就職面接の厳しさを味わいたくない。
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