あの頃の君へ
しかも私を振った理由、これが一番許せない。
“ごめん、彼女がいるんだ”……?
確認しなかった私も悪いけど、あんたは女がいるのに私と二人で出掛けたり、誕生日にプレゼントくれたりしてたわけ?
最初は感傷的だったのが、段々とイライラに変わって少し川沿いの道を早歩きしだしていた。
忘れよ忘れよ。
今日は家帰って録り貯めしてた録画見て、酒のんで……
「お姉さん」
いきなり呼び止められて振り返ると、そこにはビニール傘を差したヒョロッとした男性が立っていた。
「……」
こういうのは無視するのに限る。
踵を返して歩き出すと男は小走りで走り、私の隣に並んだ。
「釣れないなぁ。こんな雨の中傘も差さないでどうしたの?話聞くからさ、俺の家来ない?」