あの頃の君へ
拓真に好きな人がいる……?
信じられなかった。
その理由の一つは全くその気配が感じられなかったから。
私が家に入っても彼女と出くわすような事はなかったし、拓真からそんな話を聞いたこともなかった。
「……ん。そんな感じ」
はぐらかすような拓真の返事が、ついに私の足を動かした。
これ以上は踏み込んではいけないんだ。
いくら幼なじみだからって、
いくら笑顔を向けられたって
いくら、この手にチョコレートを持っていても。
そのまま玄関の扉が閉じたのと同時に、私はある思いを封じ込めた。
そして私は拓真が海外に経つまであまり拓真の家を訪れなくなった。