世界でいちばん、大キライ。
「コレね。宝物。両親の都合で小さい時に離婚した父親と、最後にふたりで連れて行ってもらった喫茶店で売ってたもの」
すすけた色がところどころある、銀色のクマのチャーム。
金具が緩んでいたのを直さずに、そのままポケットに入れて仕事をしていた。シアトルの話が進んでから、今まで以上にお守りのような念が強くなって。
その見覚えのあるクマのチャームに視線を落とした麻美は、ただ黙って桃花の話に耳を傾ける。
「最後って、本当は認めたくない気持ちのまま、遊びに行った帰りに寄ってくれたお店だったんだけどね。そのお店でお父さんがカフェラテを頼んでくれたんだ。普段はそんなの頼まないのに、って不思議に思ってた」
コロッと手のひらで遊ばせたクマを見つめて、桃花は在りし日を思い出す。
「そしたらね。カワイイ絵が描かれてるカップが運ばれてきたんだよね」
赤い夕陽が窓から射し込む時間。
ソッジョルノのような落ち着いた雰囲気の店内で、父と向き合って座っていた。
「本当は別々になるなんて嫌だったけど、『イヤだ』って……『行かないで』って言えなくて苦しかった。でも、あのラテアート見て、少し気持ちが和んだから」
「だから……?」
瞬きもせず、優しく、でもどこか寂しげな表情の桃花に問うと、ゆっくりと首を縦に振る。
すすけた色がところどころある、銀色のクマのチャーム。
金具が緩んでいたのを直さずに、そのままポケットに入れて仕事をしていた。シアトルの話が進んでから、今まで以上にお守りのような念が強くなって。
その見覚えのあるクマのチャームに視線を落とした麻美は、ただ黙って桃花の話に耳を傾ける。
「最後って、本当は認めたくない気持ちのまま、遊びに行った帰りに寄ってくれたお店だったんだけどね。そのお店でお父さんがカフェラテを頼んでくれたんだ。普段はそんなの頼まないのに、って不思議に思ってた」
コロッと手のひらで遊ばせたクマを見つめて、桃花は在りし日を思い出す。
「そしたらね。カワイイ絵が描かれてるカップが運ばれてきたんだよね」
赤い夕陽が窓から射し込む時間。
ソッジョルノのような落ち着いた雰囲気の店内で、父と向き合って座っていた。
「本当は別々になるなんて嫌だったけど、『イヤだ』って……『行かないで』って言えなくて苦しかった。でも、あのラテアート見て、少し気持ちが和んだから」
「だから……?」
瞬きもせず、優しく、でもどこか寂しげな表情の桃花に問うと、ゆっくりと首を縦に振る。