世界でいちばん、大キライ。
桃花はゆっくりと目を開き、現実を見るように小さな息を吐く。
それから、一歩、自宅の方向へと足を踏み出したとき。
桃花のいる逆側の歩道に、一台のタクシーがハザードランプをつけて停車した。
ほとんど目立つ明かりなどない暗い夜道。車通りも、全くないわけではないが、ほとんど通らない時間。
そんな時間にタクシーが停まれば、桃花も無意識のうちに視線を向けてしまう。
バタン!と、タクシーのドアの閉まる音が、静かな道路に響く。
ウインカーを点滅させて走り出したタクシーをちらりと見送り、向かい側に残された人を見て目を大きくした。
「……久志さん?」
暗いうえ、少し距離があるためにはっきりとはわからない。
けれど、久志に関しては、桃花のアンテナは感度を増す。
スーツ姿。長い手足。立ち方や、離れてても感じる久志の独特な雰囲気。
桃花はいつの間にか、久志らしき人がいる場所へと足を向け、駆け出した。
車通りがないことをいいことに、回り道もせずにそのまま直進して、男の元へと向かう。
軽く息を切らして渡り終えた桃花が見上げた先には、やはり久志が立っていた。
「あ……」
体が勝手に動いてしまったのはいいが、なにを話そうなどと全く考えてなんかない。
いまさら、桃花は自分の無計画さに気付いて困り果てる。
『どうしよう』と、目を泳がせ、恐る恐るもう一度久志を見上げると、どこかいつもとは違う久志の様子に気付く。
「あ、えっ、だ、大丈夫ですか!」
一度目が合ったあと、久志がふらりとよろつき、近くの壁にもたれかかる。
いつも気だるい感じではあるが、今回は違う。
桃花は慌てて久志の大きな体に手を添えると、項垂れている久志の顔を覗き込んだ。
「……もしかして、酔ってます?」
「うぅ……車で余計に酔った……」
体格差のある久志が、桃花に寄り掛かるようになりながら、ぼそりと口にした。
足に力を入れて、どうにか久志が転倒しないように持ちこたえた桃花は、久志の長い手を自分の肩に回して態勢を整える。
それから、一歩、自宅の方向へと足を踏み出したとき。
桃花のいる逆側の歩道に、一台のタクシーがハザードランプをつけて停車した。
ほとんど目立つ明かりなどない暗い夜道。車通りも、全くないわけではないが、ほとんど通らない時間。
そんな時間にタクシーが停まれば、桃花も無意識のうちに視線を向けてしまう。
バタン!と、タクシーのドアの閉まる音が、静かな道路に響く。
ウインカーを点滅させて走り出したタクシーをちらりと見送り、向かい側に残された人を見て目を大きくした。
「……久志さん?」
暗いうえ、少し距離があるためにはっきりとはわからない。
けれど、久志に関しては、桃花のアンテナは感度を増す。
スーツ姿。長い手足。立ち方や、離れてても感じる久志の独特な雰囲気。
桃花はいつの間にか、久志らしき人がいる場所へと足を向け、駆け出した。
車通りがないことをいいことに、回り道もせずにそのまま直進して、男の元へと向かう。
軽く息を切らして渡り終えた桃花が見上げた先には、やはり久志が立っていた。
「あ……」
体が勝手に動いてしまったのはいいが、なにを話そうなどと全く考えてなんかない。
いまさら、桃花は自分の無計画さに気付いて困り果てる。
『どうしよう』と、目を泳がせ、恐る恐るもう一度久志を見上げると、どこかいつもとは違う久志の様子に気付く。
「あ、えっ、だ、大丈夫ですか!」
一度目が合ったあと、久志がふらりとよろつき、近くの壁にもたれかかる。
いつも気だるい感じではあるが、今回は違う。
桃花は慌てて久志の大きな体に手を添えると、項垂れている久志の顔を覗き込んだ。
「……もしかして、酔ってます?」
「うぅ……車で余計に酔った……」
体格差のある久志が、桃花に寄り掛かるようになりながら、ぼそりと口にした。
足に力を入れて、どうにか久志が転倒しないように持ちこたえた桃花は、久志の長い手を自分の肩に回して態勢を整える。