世界でいちばん、大キライ。
桃花の着ている制服は、特にロゴもなにも入ってない白いシャツに、黒のショート丈のカフェエプロン。特に目立つようなデザインもあるわけではなく、カフェ・ソッジョルノの人間だと気付く人は少ないだろう。
それでもその男は断定するような物言いをしたために、桃花は心底驚いた。
「あー……大体あんたが運んできてくれるし。俺、毎週行ってるから」
「そ、それは知ってましたけど……」
「え……?あ、そうなんだ……」
(まさか、彼も私のことを知ってたなんて)
今、自分を助けてくれた人間は〝毎週金曜日の男〟。
その相手が自分のことを知っていてくれたことに、桃花は驚きと、それ以上に嬉しさが募る。
「あ、あのっ。また来てください。そのときにお礼しますから!」
「え?いーよ、そんなん」
見上げた先にあるその顔は、今まで店で一度も見たことのないような〝生きてる〟表情。
店に来た時に死に顔かというと、そういうわけではない。ただ、たったひとりでコーヒーを飲み新聞を読むだけだと、今のようなリアルな表情をすることはない。
初めて店員と客以上の会話を交わしたその声と動きと表情が、桃花の中に大きく響く。
人並みに恋はしてきた。
しかし、それよりもラテアートの方に情熱を注いできた節もある桃花が、自分でも信じられない程に緊張し、頬を赤くしていた。
理屈じゃなく直感的に、異性として意識し始めてしまった。そのとき。
「電話してんのかと思ったら、違うの?」
桃花は自分たちふたりきりだとばかり思っていた。しかし、よく考えればこの家に引き込まれた時にはすでに解錠してあった、と桃花は思い出す。
その声が聞こえた3メートルほど奥の部屋から、ひょっこりと顔を覗かせた姿を見て桃花はさらに驚いた。
それでもその男は断定するような物言いをしたために、桃花は心底驚いた。
「あー……大体あんたが運んできてくれるし。俺、毎週行ってるから」
「そ、それは知ってましたけど……」
「え……?あ、そうなんだ……」
(まさか、彼も私のことを知ってたなんて)
今、自分を助けてくれた人間は〝毎週金曜日の男〟。
その相手が自分のことを知っていてくれたことに、桃花は驚きと、それ以上に嬉しさが募る。
「あ、あのっ。また来てください。そのときにお礼しますから!」
「え?いーよ、そんなん」
見上げた先にあるその顔は、今まで店で一度も見たことのないような〝生きてる〟表情。
店に来た時に死に顔かというと、そういうわけではない。ただ、たったひとりでコーヒーを飲み新聞を読むだけだと、今のようなリアルな表情をすることはない。
初めて店員と客以上の会話を交わしたその声と動きと表情が、桃花の中に大きく響く。
人並みに恋はしてきた。
しかし、それよりもラテアートの方に情熱を注いできた節もある桃花が、自分でも信じられない程に緊張し、頬を赤くしていた。
理屈じゃなく直感的に、異性として意識し始めてしまった。そのとき。
「電話してんのかと思ったら、違うの?」
桃花は自分たちふたりきりだとばかり思っていた。しかし、よく考えればこの家に引き込まれた時にはすでに解錠してあった、と桃花は思い出す。
その声が聞こえた3メートルほど奥の部屋から、ひょっこりと顔を覗かせた姿を見て桃花はさらに驚いた。