薫子さんと主任の恋愛事情
「まあそれも、あながち間違いじゃないけどな」
大登さんの手が、私の頭に優しく落ちる。
「間違いじゃない?」
顔を元の位置に戻すと、困った顔をする大登さんと目が合った。
「でもそんな大切なこと、このシチュエーションですると思うか?」
「あ……」
そうだった。私は半パジャマ姿だし、大登さんはまだ何も着ていない。プロポーズするには、ロマンチックの欠片もない状況だ。
急に恥ずかしくなって、両手で顔を隠す。
「薫子の全部を知ったんだ。今さら顔だけを隠してもなあ」
「それでも、恥ずかしいものは恥ずかしいんです」
「じゃあ隠しとけ。でも耳は、ちゃんと聞いておけよ。俺は薫子を一生手放すつもりはない。でも焦る必要もないと思ってる」
大登さんは離しながらも、私の頭を撫でるのをやめない。
「そんな先じゃない未来に、薫子が感動するようなプロポーズしてやる。それまでは、これで我慢しとけ」