薫子さんと主任の恋愛事情
「なあ薫子。ここで暮らさないか?」
「暮らす?」
それって一体、どういう意味での暮らすなんだろう。
衣食住を共にするというのなら、その先に自ずと出てくるのは……。
結婚!?
大登さんの口から直接その言葉を聞いたわけでもないのに、ひとり動揺してしまう。でもプロポーズにしては少々味気ないものだと、贅沢な気持ちが顔を出す。
「大登さん、それってまさか……」
私の真に迫った態度に、大登さんが少しだけ怯む。
「同棲ってやつだけど、やっぱりマズいか?」
「……同棲」
緊張の糸が、ぷつんと切れた。
そうだよね。よく考えてみれば、プロポーズだったら“暮らす”なんて言うわけない。私の早とちりだ。
あははっと作り笑いをして見せる。
「もしかして、プロポーズだと思ったとか?」
安易に心を読まれてしまい、首を横に向けると頭を一度縦に振った。