薫子さんと主任の恋愛事情
結局あの後も大登さんにしばらく離してもらえず、時間も時間だからと朝ご飯は抜いて早めの昼ご飯にした。
冷蔵庫の中にあったもので簡単なものを作ると、大登さんとテーブルに向かい合って座る。
「まずは、とし子さんに報告だな」
「報告!?」
テーブルにつくなり驚くような発言をする大登さんに、思わず大きな声をあげてしまう。
「なんだよ。いきなり大声出して」
「だって大登さん、とし子さんに報告なんて言うから」
いくら以前に「薫子ちゃんを大人にしてあげて」とお願いされているからといって、「ちゃんと大人にしましたよ」と報告する人っている? そんな恥ずかしいこと報告されたら、おばちゃんと面を見て話せなくなっちゃうじゃない。
ひとり「ないない」なんて呟いていると、何かを察した大登さんが堪えるように笑い出す。
「薫子、おまえまた、何か勘違いしてるだろ?」
「私が? いつ?」
「今だって。とし子さんさんに報告するのは、俺たちが一緒に暮らすことだぞ。おまえ、何の報告だと思ってるわけ?」
そう言いながらもからかって笑い続ける大登さんに、呆れることしかできない。
「だったら最初から、そう言ってくれればよかったじゃないですか! 大登さんなんて嫌いっ!」
売り言葉に買い言葉。嫌いなんて言うつもりなかったのに、勝手に口から飛び出した。
「へえ、ホントに嫌いなんだ?」
テーブルの向こうから大登さんの手が伸びてくると、私の左頬を撫でた。