薫子さんと主任の恋愛事情

私の答えなんてわかっているからか、疑問符を投げかけてくる大登さんの目は自信満々そのもの。

私は何を言っても、大登さんには敵わない。

「嫌いなわけないじゃないですか。でもさっきのは、大登さんが悪いと思います」

私の頬を撫でている大登さんの手に、自分の手を重ねる。

「だから、謝りません」

「意外と強情なんだな」

そうさせているのは大登さんなんだと、気づいて欲しいものだ。

「そういうこと言ってると、誕生日のお祝いしてあげないですよ? いいんですか?」

重ねていた手を離し、そのかわりに大登さんの手の甲をキュッと抓る。

「わかった、わかったから抓るのやめろ」

「わかればいいんです」

ホントなら、大登さんを一捻りするくらいお手の物。でもそれをしないのは、彼の前では可愛い女性でいたいから。できることならこのまま一生、彼の前で護身術を披露することのないように、適度な距離を保ちたいものだ。

「案外俺は、薫子の尻に敷かれるのかもしれないな」

「それは、大登さん次第だと思いますけど」

大登さんを尻に敷くつもりは毛頭ない。二次元の世界でも、そんなことは一度だって望んだことはないし、どちらかと言えば大登さんに支配されたいとか束縛されたい気持ちの方が希望で……。

はっ! 私ったら、何ひとりで妄想してるの!



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