薫子さんと主任の恋愛事情
大登さんと付き合うようになり颯を持ち歩かなくなってから妄想はしなくなったけれど、まさか大登さんで妄想するとか……恥ずかしい。
「さ、早く食べましょ。今日はいろいろ忙しいですからね」
妄想していたことがバレないように誤魔化して言うと、大登さんより先に食べだす。
「色気より食い気だな」
「まだまだ食べ盛りなので」
食いしん坊だと思われたのは心外だが、妄想がバレていないことにホッとする。
でも忙しいのはホント。今日は大登さんの、大切な誕生日。麻衣さんに教えてもらって最近知ったとは言えないけれど、大好きな人の誕生日は盛大にお祝いしたい。
「大登さん、今日は何がしたいですか?」
「何? 何でもしてくれるの? そうだなあ……」
大登さんの目が細められ、妖しく光った……ような気がしたのは私の勘違いだろうか。
何がしたいとか聞くのは間違いだったと後悔していると、大登さんが突然立ち上がり私を背後から抱きしめた。
「な、何するんですか!?」
危ない予感が、私の身体を駆け巡る。
「買い物に付き合って」
「へ? 買い物……ですか?」
「何だと思ったの?」
「いや、別に……」
大登さんのことだから、また「薫子を抱きたい」とか言い出すんじゃないかと思ってしまった。