薫子さんと主任の恋愛事情

けれど、この日はちょっと違った。

「西垣、同じテーブルいいか?」

よく聞く声にうどんをすすりながら振り向くと、八木沢主任が立っていた。

なんで八木沢主任が、こんなへんぴなところに?

驚きすぎからうどんをすするのも忘れて呆然としていると、八木沢主任の後ろからひょこっと顔を出した運搬部の柴田さんに笑われた。

「西垣さん、その顔面白い」

慌ててうどんをツルンとすすり上げそれを咀嚼して飲み込むと、グラスの水を飲み干す。辺りを見渡せば、席は他にも空いている。

わざわざ、このテーブルに来なくてもいいのに……。

しかも私と八木沢主任は、仕事以外に接点はない。仕事中でもなければ特に話すこともないっていうのに、柴田さんまで連れて一体なんの用があるというのだろう。

まあ関係ないや。

目線を合わせないように会釈すると、すっとふたりに背を見せた。

これで私が拒否していると分かるだろうと思っていたのに、八木沢主任のほうが一枚上手だった。

「何も言わないところを見ると、同席してもいいってことだな」

どうしてそうなる。

八木沢主任は勝手な解釈をして私の隣に座ると、何を思ったのか私の頭を真上から掴み、グイッと方向転換させた。



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