薫子さんと主任の恋愛事情
私って、そんなに酒癖悪かったんだ。今まで飲み過ぎなくて良かった……って、そうじゃなくて。
いくら付き合うことになった八木沢主任の前とは言え、初日にそんな醜態を晒してしまうなんて。
今すぐ、消えてしまいたい……。
八木沢主任の口から手を離すと、慌てて毛布の中に潜って小さく丸まった。
「どうした? 気分でも悪いのか?」
心配そうに聞く八木沢主任の大きな手が、私の背中を優しく撫でる。
「どこも悪くありません。ただ自分のしたことが情けなくて……」
さすがに消えることは出来ないから、せめて存在を隠そうとしています。
でも八木沢主任が撫でてくれている背中がポワンと温かくなってきて、気持ちが安らぎ落ち着いてくる。
「なあ、今までに飲み過ぎて、こういう状態になったことあるのか?」
「そ、そんなのないです。ないに決まってるじゃないですか!」
女の私にそんな前科があったら、お酒を飲むのはやめているはず。いくら三次元が好きだと言ったって、そのくらいの恥じらいはあるというものだ。
「ということは、薫子は俺に気を許してるってことじゃないのか?」
「え?」
八木沢主任に気を許してる? 私が?
まったく想像もしていなかった言葉が返ってきて、その真意を確かめようと丸まっていた毛布から少しだけ顔を出す。