薫子さんと主任の恋愛事情
でも実際にされているわけもなく、それが一体どんな感じなのかもわからずに喜んでいたんだけど。
こんな感じなんだ。かなり気持ちいいかも……。
八木沢主任の手の感触にうっとり落ちそうになって、その直前に我に返る。
……って、いけないいけない。私には颯がいるというのに、この浮気者! 一瞬の快楽に身を委ねそうになるなんて、あなたの貞操観念はどこにいってしまったの!!
いまだ頭の上にある八木沢主任の手から慌てて抜けだすと、椅子を一番隅っこまで引いて距離を取る。
「大登先輩、西垣さんにかなり嫌われてますね」
「うん? そうか? これは西垣流、愛情の裏返しってやつだろ。な?」
な?って言われても、まったく意味わかんないんですけど。
西垣流? 愛情の裏返し? なんですか、それ。
私の愛情は颯だけのもの。裏返しもへったくれもないっていうの。そんなことより、颯、颯……。確か窓際の方に飛んでいったはず。
まだ何か話しているふたりは完全無視で、大切な大切な颯を探す。でもどこにも見当たらない。
そんなに遠くには、飛んで行ってないと思うんだけど。
ふたりがいることも忘れ必死になって探していると、頭上から八木沢主任の声が聞こえてくる。
「西垣が探してるのは、これか?」