薫子さんと主任の恋愛事情

もしやっ!!

慌てて振り向き、八木沢主任の手元を確認。

やっぱり……。

その手には愛しの颯のブロマイドがあって、八木沢主任は何やらニヤニヤと意味深に微笑んでいる。

「俺のライバルは、コイツってことか」

八木沢主任はそう言うとブロマイドをくるっと反転させて、颯と対峙し始めた。

と言っても相手は紙切れ(ブロマイド)。動くわけじゃないのに、八木沢主任はスゴい形相で颯を睨みつけている。

何やってるんだろう、この人。

確かさっきはライバルとか言ってたし、もしかして八木沢主任もどこかの御曹司だったりするの? いや、それはないか。もし仮にそうだったとしても、颯は二次元の世界の人。三次元の現実世界で生きている八木沢主任には、なんの意味もないことなのに。

変わった人……。

気になるのは八木沢主任じゃなくて颯のことなのに、その姿があまりにも滑稽でおもわず見入ってしまう。

「何、そんなに見つめて。俺にも興味持ったとか?」

八木沢主任がブロマイドをほんの少しだけずらすと、妖しげな瞳を私に向ける。

そんなこと、あるわけない。

でも当然のことながら八木沢主任に見入っていた視線とぶつかってしまい、驚いた私はビクッと身体が跳ねてしまう。



< 8 / 214 >

この作品をシェア

pagetop