これが私の王子様

「優しい」

「もう、詩織ったら」

 しかしこのようなやり取りが面白かったのだろう、ゆかの頬が緩む。

 初登校の時「友人はできるのか」と心配していたが、詩織とはこのように冗談を言い合えるまでの仲となった。

 一方詩織もゆかとはいい友人関係になると思っているのだろう、時折愚痴や噂話を混ぜながら学校中を案内する。

 そして、一時間目を知らせるチャイムが鳴った。


◇◆◇◆◇◆


「彼女は、水沢ゆかさん。お父さんの仕事の都合で、この学校に転校することになりました」

 一時間目の授業の開始前に、クラスメイトにゆかが紹介される。

 まさか女子生徒が転校するとは思ってもみなかったのだろう、クラスの男子生徒達が騒ぎ出し、一部の生徒が手を振る。

「わからないことは、教えてあげるように。でも、このあたりは菅生さんに任せれば大丈夫ね」

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