これが私の王子様

「菅生、もう話し掛けたのか?」

「いけない?」

「菅生らしいというか、何というか……」

「何よ、その言い方!」

「ほら、喧嘩しない」

 詩織と男子生徒の喧嘩が勃発する前に、明美は手を叩き制する。

 そのやり取りを前方で眺めていたゆかは、驚きのあまり何も言えなくなってしまう。ただ、彼等のやり取りを眺めるしかできない。

 詩織が普通の生徒と違うということはある程度理解していたゆかだが、まさかここまでとは思ってもみなかったらしく、改めて「菅生詩織」という人物の凄さを理解するのだった。

「で、水沢さんの席は……」

「私の隣がいいです」

「それでいいかしら」

「はい」

 真っ先に手を上げたのは、詩織だった。勿論、ゆかが断る理由などなく、寧ろ詩織と席が隣同士の方が安心感があった。

 詩織の手招きにゆかは彼女の側へ向かうと、改めて「宜しく」と、声を掛けた。

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