これが私の王子様
「教科書、ある?」
「まだ」
「なら机をくっ付けて……はい」
「有難う」
明美はゆかが着席したのを確認すると、授業を開始することを生徒達に告げる。
その瞬間、それぞれ好き勝手に何かを言っていた生徒達が押し黙り、一斉に教科書を開き授業に集中しだす。
以前通っていた学校とは違う生徒達の真面目さに、ゆかは目を丸くする。
流石、青藍高校というべきか――ゆかは慌てて鞄から筆箱とノートを取り出すと、自分自身に気合を入れ授業に臨む。
一時間目の授業は、国語。
将来ジャーナリストになると宣言していた詩織だが、どうやら国語は苦手らしく、いい表情をしていない。
一方ゆかは、別の意味で緊張する。
青藍高校でのはじめての授業。どれくらいのレベルで授業を行うのか、ゆかは思わず明美を凝視してしまう。
国語の授業は、淡々とした雰囲気で進められていく。
国語はそれほど苦手ではないので、ゆかは授業内容を理解できないことはなかったが、詩織はついていくのがやっとらしく相変わらず表情が悪い。