これが私の王子様

「詩織?」

「何?」

「顔が……」

「難しいのよ」

「確かに、前の学校よりは難しいわ」

「国語、苦手?」

「国語は、普通かしら」

 ゆかの苦手としている教科は、数学と体育。数学は赤点とまではいかないまでも、危ないことが多い。

 ゆかの「普通」という言葉に詩織は教科書のある部分を指し示すと、これがどのような意味なのか教えてほしいと頼む。

 それは現在行っている授業で説明されているが、詩織にとって明美の説明は難しいらしく、ゆかに簡単な解釈を求める。

 だが、ゆかも誰かに教えるほど頭がいいわけではないので、困惑してしまう。

 すると、ゆかと詩織の会話を聞き付けた明美が、チョークで二人を指し示しながら「わからないのなら、直接聞きなさい」と、指摘する。

 次の瞬間、教室中がドッと笑いに包まれた。

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