これが私の王子様
「菅生、もう転校生相手に頼み事か」
「声を掛けるのも早いが、頼み事も早いな」
「いいでしょ!」
クラスメイトの指摘に、詩織は間髪いれずに反論する。
しかしその反論さえも笑いのネタとなっているのか、クラスメイトの笑いが続く。それにつられるかたちでゆかも笑いだすと、詩織が慌てだす。
「ゆかまで、笑わないの」
「だって」
「ほら、転校生が困っているぞ」
「いじめるなよ」
「いじめてないわよ」
詩織がムキになって反論するが、これ以上の言い合いは授業の妨げになると、明美が制する。
最終警告ともいえるのが「宿題、増やすわよ」という言葉。
流石に今の言葉は相当堪えたらしく、一瞬にして静寂が訪れる。そして誰もが下を向き、懸命に黒板に書かれている内容をノートに映しだす。
生徒達が大人しくなったことに明美は嘆息と共に肩を竦めると、中断してしまった授業を再開する。