これが私の王子様
三人はゆかの顔を知らないので、詩織を捜している。
一方、詩織は三人が来たことに気付いたらしく、大声で三人を呼ぶ。相変わらずの大声に三人は苦笑し合うと、何やら話だす。
ゆかは遠くにいるので、会話は耳に届かない。ただ面白い話をしているのだろう、全員の表情が綻んでいた。
詩織が、ゆかがいる方向を指差す。
その瞬間、ゆかは反射的に視線を逸らしてしまう。
俯きながら、詩織が戻って来るのを静かに待つ。
テーブルの上に何かが置かれる音で、詩織が戻って来たことを知ると、ゆかはオドオドと顔を上げると、何を話していたのか尋ねた。
「特に何かあった……というわけじゃないわ。ゆかのことを話していて、三人は注文に行ったわ」
「おかしなこと、言っていない?」
「大丈夫よ」
「それなら、いいけど……」
といって、不安感が拭われるわけではない。
暫くした後、三人がそれぞれの料理を持ってやって来る。
直樹の料理は具沢山の麺料理で、和人と薫はハンバーグ定食。彼等はテーブルの上に料理を置くと椅子に腰を下ろし、ゆかの顔を眺める。