これが私の王子様

「彼女?」

 そう発したのは、薫。

 薫の質問に詩織は頷くと、ゆかが噂の転校生で登校の途中で会ったと話す。

 詩織の話に薫は苦笑すると「菅生は、手当たり次第に声を掛ける」と、クラスメイトと同等の意見を言う。

「迷惑、掛けられていない?」

「大丈夫です」

「なら、いいが……」

 奥歯に物が挟まる言い方に詩織はムスっとするが、態々三人が来てくれているので怒りを表面に出すわけにはいかないと、グッと堪える。

 彼等の話に何と声を掛けていいのかわからないゆかは、三人に視線を合わせられない。

 ゆかの態度から何かを読み取ったのだろう、直樹が口を開くと自分達のことを聞いているか尋ねる。

 直樹の質問にゆかはコクコクと頷くと「この学校の人気者と天才」と、彼等を評する。

 予想以上の評価に薫と直樹は「それは違う」と言い苦笑し合うと、それに当て嵌まるのは和人だという。

 友人二人から急に振られたことに、和人は思わず間の抜けた声音を発してしまう。
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