これが私の王子様

「おい」

「本当じゃないか」

「で、実家は金持ち」

 その発言で詩織から言われたことを思い出したのだろう、ゆかはオドオドとした態度を取りながら、和人に詩織から御曹司だと聞いていると伝える。

 彼女の質問に和人は一瞬表情を強張らせるも、頷き返す。

 しかし自分の実家についてあまり話したくないのだろう、それから先の言葉が続かない。

 見兼ねた薫が代わりに、和人の実家についてあれこれと話しだす。やはり詩織の話は正しく、それも想像以上のものだった。

「どうして、この学校に――」

「うん?」

「そ、その……普通は、お金持ちの学校に……」

「いけない?」

「ご、御免なさい」

 聞いてはいけない部分を聞いてしまったのだろう、和人の目付きが悪くなる。

 また、全身から発せられる雰囲気が明らかに変化し、それに恐怖を覚えたのだろう、質問を行ったゆかの眼元に涙が滲む。
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