これが私の王子様

「泣かせた」

「泣かせたね」

「泣いている」

 薫と直樹、そして詩織からの同時攻撃に和人は硬直する。

 勿論、態と泣かせてしまったわけではないが、この質問に関してはあまり大勢がいる前で話したくはなかった。

 だからこそ不機嫌な態度を取ってしまったと説明し、和人はゆかに謝る。

「い、いえ。私こそ……」

「いや、まさかここまで責められるとは……」

「私が、質問をしたから……」

 と、二人は自分が悪いのだと言い合う。

 それを苦笑しながら眺めていた詩織はいいことを思い付いたのだろう、ポンっと手を叩く。

「じゃあ、結城君に罰ゲーム」

「罰ゲーム?」

「今日、ゆかと帰宅」

 刹那、周囲から悲鳴が響き渡る。

 どうやら五人の会話に聞き耳を立てていたらしく、悲鳴を上げたのは全員が女子生徒だった。
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