これが私の王子様

「で、いいわよね」

「わかった。菅生を敵に回したくない」

「なら、決定ね」

 和人が引き受けてくれたことに満足したのか、詩織は満面の笑みを浮かべている。

 すると空腹に耐えきれなくなったのか、詩織の胃袋が鳴り出す。その音を合図に、昼食がはじまる。

 和気藹々――とはいかないのが、現在の状況。

 詩織に情報を握られているので抗議を上げられなくとも、彼等は無言のプレッシャーを放つ。

 それらのプレッシャーは漂う空気を一変させ、居心地の悪い空間を生み出す。

 しかしその状況に気付いていないのが詩織で、一人で美味しそうにご飯を平らげるが、他の四人は食事が進まない。

 心臓に剛毛が生えている。

 それが薫と直樹、そして和人の印象だった。


◇◆◇◆◇◆


 放課後。

 ゆかは、校門の前で和人が来るのを待つ。
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